2021年7月28日水曜日

シャンパーニュのコルク栓を作るOLLER社の工場を見学

シャンパーニュのコルク栓工場の見学報告です。


2週間前に試飲会で「OLLER社」CEOアレクサンドル・マルク―氏にお会いしたので
念願だった見学を直接依頼して実現。

まったくの押しかけのようですが、
「ぜひ来てください」というお言葉を額面通りに受け取らせていただくことにしました。

OLLER社の工場はランスの南東、車で10分ほどのところにあります。


下の写真は瓶に入る前のコルク栓。
OLLER社ランス工場では、
スペインから送られたパーツを一つにする工程を行っています。

顧客の要望にしたがって受注生産、直接販売。
生産者やシャンパーニュ・メゾンの厚い信頼に応えています。



コルク栓の上部3/4は圧搾コルクで作られたパーツ。
下部はコルク板を円形にくりぬいたディスクと呼ばれるパーツで成り立っています。
シャンパーニュの場合は大部分が、ディスク2つ。

ディスク1つは一般のスパークリング・ワイン用。
ディスク3つはコルク栓に更なる美しさを求める顧客用です。


入り口でマルク―氏が迎えてくださいました。

まずはスライドと共に
OLLER社の歴史や製造工程を説明してくださいます。


1892年、OLLER&Cieはエペルネ市で創業。
途中原料を仕入れるスペインのカッサ・デ・ラ・セルバに拠点を移すものの
2010年Sibel買収と共にランスに本拠地を移します。



OLLER社は、手工業の製法と伝統を守るフランスの貴重な製造業と認められ、
「EPV(ENTREPRISE DU PATRIMOINE VIVANT)」の認証を受けています。
EPVは「無形文化起業、国家遺産企業」という意味。
手工業や伝統技術を継承し未来に伝える企業に対し
フランス政府が授与する栄誉ある認証です。



コルク栓は天然のコルク樫から造られます。
コルク樫の樹皮からコルクを造る工程は産地スペインで行っています。

植樹から最初のコルク板用樹皮を取れるまでに40年。
その後、同じ木から樹皮を取れるのは9~12年ごと、樹齢200歳ごろまで。

樹の成長に沿った長い時間がかかります。

1本1本違う天然の木から、
たくさんの同じ大きさ、同じ状態のコルク栓を作るために
伝統を守りつつ新しい技術を取り入れています。



柄の部分は圧搾コルクでできていて、
このコルクの細粒は3~7mmと決められています。




スペインですでに下の写真左側のパーツまで加工されています。
そこから右側の状態にするのがランス工場の役割。




ランスの工場で行っていることは
接合、研磨、煮沸、製品の機械検査、目視検査、
嗅覚による検査。

その後要望に従い刻印を入れ、直接顧客に届けます。


製作工程と同じくらい、検査工程も大切です。

ディスクの選定も改めて行います。
外側からは欠けや見た目の検査。
内側からは強度の検査。

手工業で大切に作られるだけでなく、
レントゲンで精密検査も受け、万全を期しています。





コルク栓1個は10g前後。



接合後下の旋盤機械で3回に分けて少しずつ研磨していきます。


コルク栓の形になってからも
機械による検査、
その後目視による検査があります。

目視による検査をできるのは2人。
1日に1人で2万個以上を検査するそうです。



さらに興味深いのは嗅覚による検査。
天然の木から作られるコルク栓には
この過程がとても大切なのだとか。

毎年検査する嗅覚自体が正しいか
検査士はこの特殊技能の検査も受けています。




改めて、真ん中が製造されたコルク栓。
左側は刻印が入り、ボトルから抜栓された形のコルク栓。
右は圧搾コルクを使用しない、大きなボトル用の栓です。

下はできあがったコルク栓に刻印を入れる
顧客ごとの印章の一部です。
お手元のボトルのコルク栓にはどのような刻印があるでしょうか。
この中にあるかもしれませんね。



コルク栓工場見学いかがでしたか?
小さなコルク栓を作るのに、
こんなにもたくさんのプロセスがあるんですね。

シャンパーニュのボトルを開けるたびに
この製造プロセスを思い出すと
シャンパーニュへの思いも新たになりそうです。


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シャンパーニュは醸造過程だけでなく
ぶどう畑から醸造用の道具、ボトルやコルク栓、
周辺のことにも興味が尽きません。

今後も機会があるたびご紹介していきたいです。

もし「こんなことに興味がある」
「こういうところを見てみたい」などご要望がありましたら、
ぜひコメントをお寄せください。

できるだけご期待に応えたいと思っています。

 

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