2020年9月23日水曜日

シラノが教えてくれたこと。ネガティブな感情も受け入れる。

 シラノ(愛犬)がまだほんとに小さかった、3か月くらいの頃。

家の中で犬を飼うことが初めてで、こんなに手がかかるものとは知らず、
毎日小と大の始末と頻繁な散歩に時間を奪われ、疲れに寝不足も加わり、
日に日に追い詰められていった時期があります。

もともと、勢いで飼い始めてしまったところがあり、覚悟が足りなかったのでしょう。

きっかけは、「飼わないと思うけど、ちょっと見に行こう」とある土曜日、
仔犬のブリーダーさんが集う催事に足を運んだことでした。

2、3か月の可愛い盛りのゴールデン・レトリバーに目と心を奪われ、
こんな子が家にいたら楽しそうと想像が始まったところに、
「子供の頃から、レトリバーを買うのが夢だったんだ。
うちは犬を飼えなかったから」と夫が言うのです。
その言葉に「夢を叶えてあげられるかも」とキュンとして、
もうこれは運命と一番可愛くて元気そうな男の子を迎えることにしました。

、、、なんの準備もせずに。



その晩から、小さい命と共に生きる楽しさと共に、
大変さを嫌と言うほど味わうことになりました。
翌日曜日はペットショップはすべてお休み、
月曜日、夫はいつも通り出勤していきました。

仔犬がこんなに頻繁に小をするなんて。
そして、何度も大もするなんて。
家の中でもするなんて。
その都度後始末をして、どこでするか教えて、
ごみを減らそうとすると洗濯が山のように増え。
外に出したいけれど、予防接種前はあんまり出してもいけなくて。



ケージもなかったため、ふかふかの新しいカーペットの寝室には入れられず、
夜は別の部屋に閉じ込めておくことになり、もちろん泣くし、寝られない。
寄り添って床で寝て、深夜に寝入ったところでベッドに戻るも、
翌朝は部屋のお掃除とシラノのシャワーから始まる。
ケージを買い、リードを買い、トイレ用シートを買い、
ネットで飼い方を見ても、少しも楽にならない。
こんなことがずっと続いたら心も体も持たない。
今更だけど、散歩って一生続くんだ、、、、。

だんだん疲れてつらくなっていきました。
こんなに可愛い子に愛情を持てないなんて、私、向いてないのかもとも。
いらいらすることも増えました。
夫も夜と週末は助けてくれますが、昼間は一人きりです。
当時はランスに越して4か月、まだ他の日本人にも会っていなくて、
相談相手もいませんでした。
そのころ、心を静めるためにピアノの練習をして、
弾きすぎて両手が腱鞘炎になったくらいです。

犬は生きているのだから、途中で手放すなんてひどいと知りつつ、
自分が不適合であることは、間違いなさそうでした。

そしてある日、心と体があまりにも苦しいので、
その気持ちを認め、受け入れることにしました。
自分がどう思っているのか、自分にしっかり聞くことにしたのです。
私の心は言いました。
「私はひどい人間かもしれない。大人として失格かも。
人間なら育児放棄だものね。でもそういう人間なのかも。もう無理。
誰に非難されようともいい。夫にがっかりされても仕方がない。
自分でもがっかりだけれど、それでもいい。
この子を誰かにもらってもらい、楽になりたい。そのためなら何でもする」

自分が早々に犬を手放すような人間であることに失望しましたが、
それも自分なのだから、認めることにしました。
ならばすぐにでももらい手を探そう。大事に、可愛がってくれる人を見つけよう。

そうしたら心がぐっと軽くなり、
「庭があるうちだったら、シラノも幸せかもしれない。
子供がいたら、たくさん可愛がってもらえるかもしれない」
と最初はいいことばかり浮かんだのですが、
すぐに「お腹の弱い子だから、環境が変わって
今まで以上に粗相をすることもあるかも」と気が付きました。

私が一番大変なのはそこなのだから、他の人にとっても大変でしょう。
お庭があったとしても、ふとした時に家の中でしてしまうかもしれない。
誰が掃除をするのか。誰がシラノを洗ってやるのか。
そんな時、悪いのはシラノではないのに、疎まれたり、叱られることもあるかも、、、
と思った途端、

気が付いたら、号泣していました。
涙があふれてあふれて止まりませんでした。
しばらく、自分の号泣にびっくりしながら、泣き続けました
(これを書いていてすら涙が出てきました。なぜ)。

その時、わたしは初めて知りました。
自分の中に愛情が育っていたことを。
大変だと思いながらも、それまで一度もシラノを叱ったことがなかったことにも
初めて気が付きました。

泣いて泣いて、観念しました。これでは手放せない。
育児放棄決意からたった5分。
一人で決意して勝手に号泣、勝手に観念。泣きながら笑えてきました。

愛情がないから大変なのではなく、愛情はあっても大変なのでした。

こんな自分でもやっていけるよう、弱さを人にも明かして
物や人に頼ってやっていくしかないと、
覚悟を決めるしかないのでした。

それで問題が解決したわけではないのですけれど、
あの時、自分のネガティブな気持ちをごまかさず受け止め、
ダメな自分を引き受け、大事にしてよかったと思っています。
気持ちでなく理屈で対処したり、夫のせいにしていたら、
自分の本当の気持ちに気づかないまま、
シラノを手放したり、不満を抱えたまま飼い続けていたかもしれません。



いろいろな日々を経て、シラノはもうすぐ8歳です。
子供の時も可愛かったですが、
8年の歳月分、今の方が愛おしく感じる気がします。

2 件のコメント:

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